「自分らしく生きる」リベラルが強烈に進んだ社会では、一部の(運の良かった)知能の高い(?)上級国民と、知能の低い(?)下級国民に分断され、敗者復活ができない「無理ゲー」な社会が形成されるという「現実」について書かれた内容。
誰もが「知能と努力」によって成功できる思われているメリトクラシー社会では、逆に成功していない人にとっては一生地獄が続くという事。
その解決策の思考実験としては刺激の多い内容でした。
経済格差は「貨幣の分配の不均衡」であり、これは分配方法を公正すれば問題は解決するが、次に来るのは「評判格差社会」と著者は指摘する。
さて「自分らしく生きる」ことが、物理法則の則っているのだろうか?色々考えさせられました。
健忘録として気になった部分を引用しておきます。
- ここでいう「リベラル」は政治イデオロギーのことではなく、「自分の人生は自分で決める」「すべてのひとが”自分らしく生きられる”社会を目指すべきだ」という価値観のことだ。
- 大学で学生のキャリア支援を行なう高部大問は、若者たちが「夢」に押しつぶされていく実態を「ドリーム・ハラスメント」と名付けた。
- メリトクラシーの背景には、「教育によって学力はいくらでも向上する」「努力すればどんな夢でもかなう」という信念がある。これこそ、「リベラルな社会」を成り立たせる最大の「神話」だ。
- メリトクラシーを支持する知識人はこの矛盾を、「おたまじゃくし理論」で正当化しようとする。おたまじゃくしは、いつかカエルになれると思っているから幸福なのだという。だが、「若いうちは幸福かもしれないが、蛙になれないことを知った多くの年をとったおたまじゃくしはどうなるのか」とヤングは問う。
- ヒトに欲望があるかぎり、資本主義から「脱却」することはできないだろう。
- 日本社会にとって高齢者批判は最大のタブーなので、現実を直視せずにこの理不尽な事態を説明するにはなにか別の「犯人」が必要だ。このようにして「格差」や「貧困」あるいは「資本主義」への批判が声高に語られるのだ。
- 生き物が環境に適応してより複雑に進化していくように、テクノロジーの進歩とともに貨幣も知識も人間もより「なめらかに流れる」ようになって、社会はより複雑に「進化」していく。
- お金は分配できるが、評判を分配することはできない。
- あなたがいまの生活に満足しているとしたら素晴らしいことだが、その幸運は「自分らしく生きる」特権を奪われたひとたちの犠牲のうえに成り立っている。
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